IR候補地、各自治体が東京でアピール合戦

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を目指す自治体と海外のIR事業者が意見交換するフォーラム「ジャパン・ゲーミング・コングレス」が11日、東京都内で開かれ、和歌山県や長崎県などの首長らが候補地としての魅力や誘致に向けた計画をアピールした。IR誘致をめぐっては、大阪湾の人工島・夢洲(大阪市此花区)への誘致を目指す大阪府・市が有力視されており、注目が集まりがちだが、参加した自治体関係者は「自分たちも存在感を発揮していきたい」と『ライバル』に対抗心を燃やしている。

「海や温泉、自然があり、たくさんのスポーツレジャーを楽しめるのが和歌山のポテンシャルだ」

この日のフォーラムで行われた各自治体の首長らによるプレゼンテーションで、和歌山県の仁坂吉伸知事は、マカオでIRを運営するギャラクシー・エンターテインメント・グループなど約10社の参加事業者らを前に熱弁をふるった。

同県は、和歌山市の人工島・和歌山マリーナシティにIRを建設する構想を描く。
訪日外国人客(インバウンド)を集客しやすい関西国際空港から車で約45分という交通アクセスの良さに加え、県内に世界遺産の高野山や熊野古道があるなど、恵まれた観光資源を強みに誘致を進めてきた。

一方、誘致活動で先行する大阪府市はこの日、松井一郎府知事と吉村洋文大阪市長が府庁で、マカオのIR事業者の表敬訪問があったため参加を見合わせた。
松井知事は、かねて和歌山に強気の姿勢を見せており、今年1月には「切磋琢磨(せっさたくま)だ。和歌山は和歌山で頑張ってほしい」とエールを送る一方、「申し訳ないが一歩も二歩も先行している」と自信をのぞかせる。

4月に閣議決定されたIRの実施(整備)法案が今後、国会で成立した場合、IRの認定区域に選定されるのは全国で最大3カ所に限られる。誘致合戦で埋没しないためには、存在感を高めていくことが課題で、フォーラムに参加した県幹部は「和歌山の誘致計画は他地域と比べても決して遜色はない」と力を込めた。

 フォーラムには、長崎県や北海道釧路市、苫小牧市などの首長や誘致担当者らも出席。長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」への誘致を目指す同県の担当者は「アジアのマーケットに非常に近い」とアピールしていた。

IRをめぐっては、政府が4月27日に実施(整備)法案を閣議決定した。
カジノ事業は免許制とし、全国で最大3カ所を整備できると規定。カジノへの入場は、訪日外国人は無料だが、日本人客は「週3回、月10回まで」と制限を設けた上で入場料として料金6千円を徴収するとしており、カジノのほか国際会議場、ホテルなど集客施設も一体整備すると定めている。

2025年国際博覧会(万博)誘致を目指す大阪府市は、それ以前にIRを開業してインフラを万博にも活用したい意向だが、国会の混乱などで審議の難航が予想されており、先行きは不透明だ。

大阪市の試算ではIRを誘致した場合、年6900億円の経済効果が期待される一方、ギャンブル依存症対策が課題となっている。
公明党はギャンブル依存症対策法案を先行審議するよう求めており、自民、公明両党は今月10日、ギャンブル依存症対策法案に関する与野党の会合で、依存症患者らで構成する関係者会議を設置することを盛り込んだ修正案を提示。
賛同している日本維新の会と共に国会に近く共同提案する方針だ。

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